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ある日の事件(下)


「ある日の事件(上)」の続きです。
完結。


なんだか文がうだうだとしてますが・・
まあ、気にしないでくださいまし。



腐向けですので、お気をつけて。
大丈夫な方は追記からお読みください。

「_______くっ、あははははははっ。」



いきなり背筋がぞっとするような、高笑いし始めたヴィンセントを
3人は怪訝そうな顔で見た。
それでもまだ彼はくすくすと笑ったままで、何が可笑しいのか分からないものの、
彼は大変愉快そうな様子でこの場を楽しんでいるようだった。

"何故こいつは笑ってる・・・?"

この男は本当に何を考えているか分からない。むしろその頭の中など
誰一人知りたくもないわけで、少なくとも兄であるギルバートさえも彼の事は
理解しがたい人物だと認識し、極力関わりを持たないように注意していた。
それはオズもブレイクも同じで、それであるのにまさかこんな状況になるとは2人とも
予想はしていなかった。
しかし、その結果がこれである。


「____何が、可笑しい。」
ギリ・・っと歯を食いしばりながら、ギルバートは射抜くような鋭い視線を
ヴィンセントに浴びせた。
無論、それに動じることなく依然と不気味な、かつ何処か悪戯好きな子供っぽい笑みを
浮かべるヴィンセントはゆっくりと口を開く。
「ん~・・?何が可笑しいって?」
そうわざとらしく僅かに首を傾げて悩むフリをする。
そんな彼の少しの動作にも、オズたちは眉を顰めた。

しかし次に放たれた言葉に、オズとギルバートは絶句する。
「・・・・・兄さんは本当にオズ=べザリウスのことを”愛してる”よね。」
まるで見せ付けるように、ぎゅうとオズを抱き締めながら彼はギルバートの方へ
だんだんと歩み寄ってきた。
ギルバートはその場に突っ立ったまま目を見開いている。
一瞬呆然としていたオズだったが、きつく身体を締める腕から逃れようと、
必死にもがいた。
ギルバートが自分を愛しているとか何とか言っていたが、今はこの男の手から
逃れることが最優先だ、とオズは考えた。

「・・くっ。は、なせっ・・・・!」
こんな男に抱き締められているなんて・・、とオズは吐き気がしてならなかった。
そんな様子を静かに見ていたブレイクは、ハアと深く溜息をつき口の中に飴を放り込んでガリリッと噛み砕く。
「つくづく嫌な男ですネェ。貴方は。はっきり言って気持ち悪いデス。」
「あれ。帽子屋さんが誉めてくれるなんて。・・嬉しいなあ。」
「アッハッハ。・・・誰が誉めますカ。馬鹿でしょう。」
ブレイクが蔑むようにヴィンセントを見、わざとらしい空笑いをした。
侮蔑されているというのに尚、ヴィンセントはにっこりと笑っていた。

「オズっ!!!」
彼はギルバートの真ん前に堂々と立つと、まるで飽きてしまった人形を捨てるかのように、ぽいっと従者の腕の中へと投げた。そしてすぐに彼は2人から離れて窓側の方へ歩んでいく。
咄嗟にギルバートはしっかりとオズの体を抱き寄せると、小さく「大丈夫か?」とギルバートはオズの耳元に囁きオズの身を按じた。すぐさまオズは「・・うん。平気だ。」と答えた。
実際、何かされたといえば抱き締められただけで、その他オズは何もされていなかった。
やっと魔の手の呪縛から解き放たれたオズは、ほっと安心したようにギルバートの胸に頭を傾かせ、大きく深呼吸をする。煙草の匂いはそんなに好きではないオズだったが、香水の甘ったるい匂いがたっぷりとしていたヴィンセントと比べると何億倍もよく思えて、ほのかにギルバートのコートから香るその匂いを満足そうに嗅ぐ。
ギルバートは強く抱き締めた。



「・・あ~あ。なんかもうつまんないな。」

いつの間にか、窓枠に足をかけて空を見ていたヴィンセントが溜息をついた。
ブレイク達からは顔が見えないため、どのような表情をしているかは知ることはできないが、声音は低い。
「遊び飽きちゃった。」
そう言って振り向いた彼は普段通りやはり笑ったままで____しかし
眼は冷ややか_____不気味であった。
理解不能なヴィンセントの行動に眉を顰めたままのギルバートは、いっそう護るように
オズを抱き込む。正直苦しいものなのだが、オズは何も言わなかった。



「・・・ヴィンス。お前は一体何を考えて・・」
「あーハイハイ。ヴィンセント様、さっさとお帰りを。ワタシ達は貴方ほど暇じゃないんでネ。」
「本当ダゼ!」
ギルバートが疑問を投げかけようとした時、突然ブレイクが口を開き、肩にいるエミリーもケタケタと笑い始めた。言葉を遮られたギルバートを他所にブレイクは
そのまま呆れたような口調で続ける。
「オズ君で遊ぶんじゃなくて、いつもお持ちになっている人形で遊んで下さいヨ。
何個でもあるでしょう?貴方様の周りには。」
「それも山のようにナ!」
「じゃ。また会う日までさようなら。______そこの窓からどうぞ。」
「じゃーナー!!」
そう言うと、そのまましっしっと追い払うような仕草で袖を揺らし、ヴィンセントが立つ傍の窓を指した。エミリーもきっかり同じ動作をしている。


部屋には窓からの風がざあ・・と吹き込んでいった。

ちらとギルバートが傍らのブレイクを盗み見ると、変わりない意図が読めない笑みを浮かべている彼であったが、何処となく苛立っている様子である気もした。
一方、オズはギルバートの腕の中からヴィンセントを窺っていた。
怖いというわけではないのだが、彼の行動には計り知れないものを感じるオズは(いや、他の者もそう思っているかもしれないが。)下手に動くのはやめてギルバート達にまかせようと考えたのだった。そして今、ギルバートの服にしがみついている。


「________酷いなあ。一応お客人だと思うのにね、僕。」
未だ少し微笑していたヴィンセントはそう言い放つと、窓枠に足をかけて早々と去っていくのかと思いきや、クルリと体の向きを変え、振り向いた。
その時、瞳がオズを捉えた。目を離さずに彼を窺い見ていたオズは、目が合ったことに一瞬ビクリと体が跳ね、冷や汗が出た。オッドアイが不気味に光り、捕らえるようにオズの視線を絡めとった。
それを見たヴィンセントは満足げにふふっと笑うと、すっとギルバートとブレイクの方へ顔を向け、
「じゃあ、またね兄さん、帽子屋さん。また遊びに来るよ。」
と、特有の笑みを顔全体に広げながら、彼はバサッと髪をなびかせ窓から飛び降り去っていった。






それからは、まるで嵐が去った後のように3人は暫く静かにその場に佇んでいた。


「・・・もう、来なくて結構デス。面倒くさい・・。」
「失礼極まりないからナ!」

「・・・・・。大丈夫か。オズ。」
「・・・うん、まあ、ね。」
自分の腕から少し離れたオズに、ギルバートは気遣いの言葉をかける。
オズは眉を下げ、肩を竦めた。
「あいつは・・・あいつは本当に一体何なんだっ。ベタベタベタベタと・・っ!オレの主人に・・。」

正直、2人は何故ヴィンセントがこんなにもオズにこだわるのかが理解できていなく、少々心の中にわだかまりがあった。
ギルバートにとっては、あまり見ない彼の行動に驚きと不安を覚え、同時に、彼のオズに対しての態度に苛立ちと怒りが募っていた。

その様子を傍から見ていたブレイクは、「だから言ったでしょう?オズ君、君は狙われているって。」と、淡々と言った。
「大変ダナ!」
「えー・・っ」
「本当、だったのか・・っ!?」
「本当の事じゃなかったらワタシだってわざわざ言いませんヨ。
ただ言わないと面倒だから言ったんデス。
特に、ギルバート君、君に対しての注意でネ。」
「オレに・・・?」
苦々しい顔をしているオズと、信じられない・・と、ひどく驚くギルバート。

"つまり、狙われているってことは・・・さっきの話の流れからすると・・。
やっぱり_____"
「そうっ、正解デス、オズ君。彼、モノにしようとしたんですヨー。」
「ケケケっ。男色なのか、アイツ!」
ふとオズが心の中で低く呟いた言葉を認識したのか、突然ブレイクがアッハハー☆と軽く笑いながら綽々と言う。相変わらず堂々と昼間からそんな事を言う彼に、オズは苦笑いを隠せない。

「・・・まじか・・。」
オズは全身に鳥肌が立った。
あんな男に自分が_____?
まさかヴィンセントにそのような対象に見られるなどと誰が思うだろうか。しょっちゅう顔を合わせているわけでもない、怪しい男に。
オズは、ヴィンセントだけには絶対にモノにされたくないと思った。
その裏には、オズの他の者への想いが隠されている事に、ブレイクはきっと既に気がついているだろう。

「・・・・・な、んだと・・?」
ブレイクの言葉を聞いたギルバートは、途端に眉を釣り上げ、叫んだ。
「ふざけるな・・・。誰が・・っ、誰がこいつを抱かせるかっ!!!
オズはオレの主人だっ、オレのもの・・ぶっ!!?」
「だからいつお前のものになったんだって。」
あらぬ事を口走ったギルバートの頬にオズはパンチを食らわせた。
ギルバートはくうううううっ、と頬を片手で押さえ、悶えた。
"相変わらず加減が無い・・。"
じんじんと痛む頬は熱を持った。このようなパターンは慣れてはいるけれども、やはり毎回毎回痛いのには変わりは無く、ついで容赦ないのだ。
「オズ・・もう少し手加減を・・」
と、暫く瞑っていた目をふと開ければ、目の前にはほんのり赤い顔があった。
「オズ?」
それは怒っているせいなのかと思ったギルバート。
しかし実際は違うことに彼が気づくわけも無く。オズは盛大な溜息をつきながらギルバートを見つめた。

「・・・ギルバート君鈍すぎデス。」
「それもともとでしょ?」
「アッハハ。でしょうネ。」
「・・・・・?何だ?」
いつの間にかオズの横に来て並んだブレイク。
彼らを怪訝な顔つきで見てギルバートは首を傾げた。ブレイクはオズの肩にぽんっと手を置くと、すっとギルバートの方へ目を向け、クスリと笑う。

「ワタシが"狙われているから気をつけて"と言ったのは、別に主にオズ君に対してじゃなかったんですヨ?」
「は?だからそれはどういう意味で・・」
「それはですねー、あの"変態男色キチガイ男"「ネーミング変わったな、おい。」____に、オズ君を捕られないように気をつけて下さいネ?という意味をギルバート君。君に汲み取ってもらいたかったんですヨー・・・。駄目だったですケド。
あー、でもおかしいですネェ。君、そういう危機感だけは持ち合わせいるかと思ったのに。」
「どんな男に見られてるんだ、オレは・・。」
「え・・?鈍感へタレ?」
「ハッキリ言うなっ!」
ギルバートがブレイクに向かって叫んだ。

「_____ま。とにかく。このような事件が起こったのは、2人がお互い知らぬままに、前々から心を通わせていない結果ですヨ。反省してくださいネ。」
「_____え?ちょっと待ってブレイク」
「では。ごゆっくり~☆」
「え、もしかしてこの空気で言うの・・っ!?」
カッポカッポと靴を鳴らして足早に出て行こうとするブレイクに思わずオズは投げかける。しかし彼はただ手を振るだけで、ドアをキィと開かせた。

"心を通わせていないから・・・早く気持ちを伝えろってこと!?ブレイクっ。"
オズは、えええっ!?と内心わたわた焦っていた。

「ワカメっ全部吐くんダゼ!溜めんなヨ!」
「は!?」
そうして、去り際に、呆然と立つギルバートにブレイクはそう言い残すと、すっと彼は
視界から消えて居なくなった。
部屋には、何がどのような意味だかさっぱりな様子なギルバートと、ブレイクの明らかな意図を理解して焦っているオズの2人が残された。
お互い無言のままであった。






「・・・・あの・・・オズ?」
「ギル、お前さ、オレの事抱かせたくないとか、お前のものだとか・・言ってたよな・・?」
オズは覚悟を決めた。
ここは割り切って、この際ズバッと思い切って聞こうと思ったのだ。


「___っ!?!?・・・そ、それは・・・っ」
「それって・・何で?」
「・・・・・。」
彼自身目を見開けば、ギルバートはそのまま黙ってしまう。

オズはギルバートの本心を知っている。
だがそれを自分の口から言ってしまっては、意味が無い。
知っているからこそ、その確認のために彼の口から本心が紡がれるのをオズは待ちたかった。

「・・・・それ、は・・。」

オズがゆっくりと自分の方へ歩いてくるのを視界に入れながら、ギルバートは次の瞬間はっと顔を真っ赤にさせ、それから真っ青になって項垂るギルバート。
自分が思わず口が滑って言ってしまったことを後悔しても、もはや既に遅かった。
想い人を前にして言うつもりはこの先無かった筈であるのに、言ってしまっていた。
ましてやヴィンセントに付き纏われ、男に愛されることに嫌悪感を抱いている彼を前にして、あのような言葉は禁句であったかもしれなかったのに。自分は何て事をしてしまったんだろう、とギルバートは悔恨の念に駆られ、唇を強く噛んだ。
"・・せめて・・嫌われたくはないが・・・無理、だよな・・。"
オズがヴィンセントから逃れようとしていた姿を思い出しつつ、ギルバートが内心自嘲していた時だった。


「・・大丈夫だよ。」


「________!」
目を見開き、ギルバートは息を詰めた。
まるで心の中を見透かしたように、オズは言ったのだ。
何も言えずにいたギルバートは、不意にかけられたオズの言葉にひどく動揺した。
"それは・・・・。言っても大丈夫だ、ということなのか・・?"
ドクンドクンと波打つ鼓動が身体全体に響く。
そして自然とごくりと唾を飲み込みながら、ギルバートが言おうか言うまいか迷っていた時。


「・・ははっ。お互い、正直に言おうか。
オレはね、ギルバート。お前の事が好きだよ。」
「___________えっ。」


間抜けな声を上げつつ、ギルバートはばっと勢いよく顔を上げてオズを見た。そして、次の瞬間、見た光景にギルバートは思わず凝視してしまう。そこには頬を染めて照れながらやや下を向くオズがいた。
"オズに______告白された・・・。"
確信した時には、ギルバートは頭の中が真っ白になってしまいそうだった。また、最悪気絶してしまいそうでもあった。

「・・・・なんだよ。オレのこと信じられないっての?」
先程と同じ、またもややや無言の状態になった彼に痺れを切らして、今度は不機嫌な口調で告げるオズ。
それでも突然言われた言葉にギルバートは耳を疑うしかなかった。


一生叶わない事だと思っていた。
しかしそれはオズも同じで、ギルバートに想いを告げる事ができる日が来るなどと予想もしなかった。

「・・・いや・・。信じて、いいのか。
こんな事が・・こんな幸せな事が・・。起こったなんて。」
何度も、何度も彼はこれは夢ではないかと疑ってしまう。
ギルバートにとっては無理無かった。これまでずっと夢だけで描いてきた理想のシーンが、現在この場で繰り広げられようとしているのだから。
彼は嬉しすぎて涙が出そうであった。





幸せな瞬間が、今訪れたようにギルバートはふと思った。
それは勿論オズも同じで。


「ははっ。バカ。」
困ったようにオズは小さく笑うと、ギルバートの手を自分の頬へと持っていき、ぴとっと寄せた。少し低い体温の感触が心地良い。
「______ほら。・・夢じゃないからな。
自分で顔引っ叩くとかやめろよ?」
ギルバートであったら絶対にやりかねるなとオズは思い、一応彼に言っておいた。すると、やはりそれをしようとしていたのか、ギルバートはピクリと身体を震わせてから「今、しようと思っていたところだ・・。」と、苦笑いして言った。
オズはふふっと笑う。

「オズ。」
オズの笑みを一通り見たギルバートは急に真面目な顔になり、頬にそえられたオズの手を掴むと、真っ直ぐに翠玉の瞳を見つめた。
その瞬間、彼はオズの瞳の奥にちらと小さな感情の揺らめきが垣間見えたように感じる。
「好きだ。」
静かに、しかしハッキリと自分の口から言えることが出来た。
「ずっと・・・言えなかった。
オレもお前も同じ男で、それに主従関係だ。まさかお互いに恋慕を抱いていたとは・・・予想だにしなかった。」
ギルバートはゆっくりと言葉を紡いでいったその間にも、オズはじっとギルバートの瞳を見つめていた。そのあまりの澄んだエメラルドの色の輝きに引き込まれてしまいそうだった。いや、すでに惹き込まれているだろうと思う。思わず目を逸らしそうになるのをギルバートは堪え、そのまま見つめ続ける。

「・・・けれど、夢じゃないんだもんな。オズ。」
「当たり前。」
ふんっと胸を張って言う、子供相応の可愛らしい仕草のオズの姿に、ギルバートは愛おしさが更に積もる。
「本当に、夢じゃないんだもんな・・。」
「はあ。_____もー・・しつこいなあ、ギル。飛びつくぞ。
・・とりゃっっっ!」
「うわっ!?!?」
いつまで経っても夢見心地気分のギルバートに喝を入れるため、
オズは思いっきり彼の胸にダイブした。
すると倒れはしないがややよろりと身体がふらついただけで、彼は強くしっかりとオズを受け止め、そしてオズは優しく抱き締められる。
その時、オズはふと気が付いた。数十分前にも同じ光景があったなあ、と。

「ったく・・・危ないだろう。」
突然アタックしてきたオズに向かってギルバートは注意し、そして
困ったように、しかし優しい笑顔でそう言い放った。
怒っている口調であるのに声音はそうではない。

時々ギルバートはこのような感じになる。
しかも、オズの前だけ。

「なあ。ヴィンセントがオレを抱き締めてた時、ギルはどう思ってた?」
「・・・え?」
気が緩んでいる隙を狙って、オズは何気なく聞いてみる。
「______嫉妬した?」
「う・・・。」
「したんだ?」
「・・・し、したっ、というか・・、それどころじゃなかったというか・・」
「は?どういう事?」
"嫉妬はした"のは分かったものの、その後の意味が分からないオズ。ギルバートを見上げ、首を傾げる。

「・・嫉妬どころか、それ以上の殺気を抱いた。
もし、あのままお前をヴィンスに連れて行かれてたら、オレは一体何をしでかしたことか。」
「えっ、そんな感じになる・・!?」
「なるに決まってるだろう!好きな人が目の前で連れ去られて平常な奴がいるかっ。」
「はははっ。その好きすぎる故に結構爆弾発言してたもんねー。」
「_____っっっ!!!」
さらりとそんな事を言ってしまえば、当の本人は真っ赤になってわたわたとし始める。
そっ!それを言うなっ!とオズに向かって言い放ちながら。
そのような様子をオズはいつものように内心ニヤニヤしつつ、見つめるのだった。本当彼をいじるのだけは面白い。オズは毎回同じ事を思う。

「それも"オズはオレのもの"とかねー。」
「なっ・・。」
「ギルって独占欲強いねー。あーオレって愛されてるうー。」
「ちょっ、オッ、オズっ!!!待て!!」
「さーって。シャロンちゃんたちとお茶にでもしようかなー。」
「だからっ!オズ!待ってくれって・・」
器用にギルバートの手をするりとかわして、はははっと面白げに笑い部屋の外へと逃げるオズ。結果的に必死に追いかけるギルバート。

「やだよー☆」
オズはそのまま廊下をバタバタと駆け抜ける。
子供だからなのか、やけに逃げ足は速かった。
いや、いつもそうだった。


ギルバートは追いかけながらハア、と溜息をついた。
"どうしてこんな展開になったのか・・。"
甘い時間の筈ではなかったか、とギルバートは苦笑いを浮かべた。
実は自分の中では、密かに告白してからキスに持っていこうとしていたのだが、本人には気付いてもらえず。
なかなか理想通りにはいかないものだ、と彼は思った。
特に「オズ」という恋人兼主人を相手だと。




「まあ・・。それがオズだからな。」

仕方ないか。
そう呟いて、サロンの部屋に入っていったオズの背を駆けながら見つめて、ふっと笑みを零したギルバートだった。



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